artscapeレビュー

「暮らしと美術と高島屋」展

2013年07月15日号

会期:2013/04/20~2013/06/23

世田谷美術館[東京都]

いまどき「美術と百貨店ってなんの関係があるの?」といぶかしむ若者もいるはずだが、「デパートと美術」は歴史的には興味深いテーマ。明治のころだと三井呉服店─三越百貨店がリードし、20年ほど前までは西武デパートがぶっちぎりのトップに立っていたが(これはやっぱり売り上げに比例する)、ここでは高島屋1本に絞ってる。焦点を絞ってるため展示は明快だが、関係する美術家(日本画家と工芸家が多い)は限られ、「デパートと美術」全体について考えるうえでは広がりに欠ける。そのためか、後半では三越や白木屋などのデパート建築、ポスターなども紹介し、カタログには高島屋社長と西武流通グループの総帥だった堤清二こと辻井喬との対談を載せている。いちおう目配りはしているのだ。それにしても、なぜ公立美術館が高島屋という特定のデパートを採り上げたのか、なぜ「デパートと美術」という一般論にしなかったのか不思議に思ったが、答えは意外と簡単、近所に玉川高島屋があるからだ。それに、世田美は2007年にも「福原信三と美術と資生堂」という一企業と美術の関係をたどる展覧会を開いた前歴もあるし。公立館としてはなかなか勇気のいることだと思う。こんどは東急の五島と組むか、いや、それより隣接地に清掃工場があるので、ぜひ「ゴミとアート」をテーマにしていただきたい。

2013/06/15(土)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00021219.json l 10089279

2013年07月15日号の
artscapeレビュー