artscapeレビュー
森末由美子 展「道草ルート」
2013年07月15日号
会期:2013/06/03~2013/06/22
ギャラリーほそかわ[大阪府]
これまで、本や食卓塩の瓶など、身近にあるさまざまなものに手を加えた作品を発表してきた森末由美子。近年は、刺繍を施した作品も展開している。本展では刺繍をはじめ、おもに糸を用いた新作11点が発表された。葉脈だけ残した葉っぱ(装飾用の既成品)に刺繍を施したこの6点のシリーズは、近づいて見ると色糸が何色も使われているのが確認できるのだが、葉脈に糸を絡ませながら刺繍されたそれらは絵画のような色彩の表情も美しく、離れたり近づいたり、見る位置で印象が異なるのも面白かった。ヘチマタワシに刺繍を施した作品にはさらに吃驚。聞いたところによると約20種類の色糸を用いてヘチマの繊維に縫い付けているのだそう。精緻で丁寧な仕事ぶりにも目を見張るが、白いヘチマタワシが、たくさんの糸の色によって“ヘチマらしい”青いヘチマのイメージになっていく、その過程を想像するのも楽しい。ほかに、ざるにオレンジやピンクの糸を繰り返し渡し縫い付けた作品や、金魚すくいの「金魚ポイ」という網を連ねた作品等も展示されていた。糸によってモノの隙間が少しずつ埋まり、面という要素ができていくなかで、ある時するりとイメージが変容する、その軽快な洒落っ気と繊細な作業のギャップにも惹かれる。今後の発表作品もまた楽しみになった。
2013/06/14(金)(酒井千穂)