artscapeレビュー
佐藤一郎 退任記念展
2014年02月15日号
会期:2014/01/06~2014/01/19
東京藝術大学大学美術館3階[東京都]
佐藤一郎の名前はぼくが美大生だった70年代から聞いていた。クラスメートに仙台出身者が3、4人いて、彼らが畏敬すべき先輩として、また新進画家としてウワサしてたのを耳にしていたからだ。カタログで調べてみると、当時佐藤はまだ20代で西ドイツに留学中だったが、少なくとも宮城県出身の美大生のあいだでは伝説的存在だったらしい。その後、彼が著した油彩画の技法書を読んだりしたが、その作品はほとんど見る機会がなかった。だから今回が初めてのはずなのに、なぜか40年ぶりに友人と再開するようななつかしさを覚えた。作品は家族の肖像を中心とする身近な日常的主題と、仏像や花、滝の風景など日本的主題に大きく分けられるが、どれも色彩は調色を誤ったように彩度の差が激しく、そのため人物も風景も非現実的に映る。これがウワサの佐藤一郎だったのか、と40年ぶりに納得。それにしても、エントランス正面に40枚近い石膏デッサンを貼り出したり、子どものころの絵まで見せたりして、さすが芸大一筋、絵画一筋。リッパだと思う。
2014/01/09(木)(村田真)