artscapeレビュー
モイラ嬢のための9つの変奏曲
2014年02月15日号
会期:2014/01/08~2014/01/25
神保町画廊[東京都]
「口枷屋モイラ」という名前で、コスプレやオブジェ制作など、多方面で活動している謎の女性、モイラ嬢をモデルに10人(9組)のアーティストが共演したコラボレーション展である。ギャラリーの企画力が充分に発揮され、なかなか面白い展示になっていた。中島圭一郎、伴田良輔、フクダタカヤス、村田兼一、村田タマ、渡邊安治は写真作品を、武井裕之とオオタアリサは写真とイラストの合作を、三嶋哲也は本格的な油画の肖像画を、上野航はストッキングを使ったオブジェ作品を出品していた。
このような実在のモデルを共通のテーマとするような展覧会の企画は、ありそうでなかなかないのではないだろうか。展示が成功したのは、ひとえにモイラ嬢の千変万化するキャラクターによるところが大きい。純真無垢な女生徒から妖艶な魔性の女までを、コスプレとメーキャップを駆使して演じ分ける変身能力の高さに、それぞれのアーティストが全身全霊で反応することで、彼らのいつもの作品とはひと味違ったテンションの高さが実現した。同じモデルとは思えないほどの表現力の幅の広さを、たっぷりと愉しむことができる。こうなると、この企画を一度で終わらせるのはもったいない気がしてくる。アーティストの顔ぶれを固定するとマンネリ化してくるので、違うジャンルの人たちにも声をかけて、さらに多人数のコラボレーション展を実現してほしい。平面作品のヴィジュアル・アーティストだけでなく、映像作家や言葉の表現者にも参加してもらうと、面白い広がりが期待できそうだ。
2014/01/08(水)(飯沢耕太郎)