artscapeレビュー
今道子「RECENT WORKS」
2014年02月15日号
会期:2014/01/08~2014/03/01
フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]
10年あまりの沈黙の時期を経て、2011年に銀座・巷房での個展で復活を遂げてからの今道子の作品世界は、以前とはやや違った雰囲気を醸し出している。彼女のトレードマークというべき魚、鶏、野菜、果物等の「食べ物」を素材に、奇妙にリアルな手触りを備えたオブジェをつくり上げて撮影するスタイルに変化はない。だが、以前の作品に見られた、自らの特異な生理感覚を前面に押し出し、やや神経質に思えるほどにマニエリスム的な画面構成に執着する傾向は、少しずつ薄れてきているのではないだろうか。
今回のフォト・ギャラリー・インターナショナル(P.G.I)での個展に出品された「RECENT WORKS」(主に2013年に撮影)を見ると、どこかゆったりとした、のびやかな空気感が漂っているのを感じる。彼女の精神的な余裕、あるいは写真作家として長年培ってきた自信が、作品にほのぼのとしたユーモアをもたらしているのかもしれない。「白うさぎと目」のような作品は、不気味であるとともに実に愛らしくて、思わず笑ってしまうほどだ。といっても、決して手を抜いているわけではなく「骨のワンピース」のような大作では、エアブラシで絵の具を吹き付けて背景の布にタケノコの形を浮かび上がらせるといった工夫も凝らしている。
これらの新作も、そろそろ展覧会や写真集にまとめる時期に来ているのではないだろうか。1980年代以来の作品を、まとめて見ることができるような機会をぜひ実現してほしい。どこかの美術館に、ぜひ手を挙げていただきたいものだ。
2014/01/21(火)(飯沢耕太郎)