artscapeレビュー
伊坂幸太郎『仙台ぐらし』
2014年02月15日号
発行所:荒蝦夷
発行日:2012/02/18
伊坂幸太郎の『仙台ぐらし』を読む。日常のエッセイ集で、前半は本当に普通のエピソードが多いのだが、震災へのコメントを避けてきた彼としては珍しい当時の記述は、やはり仙台在住ならではの内容だった。スーパーマーケットの開店情報を聞いて行列をするといった些細なことだが、関東圏の作家はこういう震災直後の体験をしていない。巻末の短編小説「ブックモービル」は、ボランティアによる移動図書館の話だが、視覚的にわかりやすい被害のシーンを求める映画監督に噛み付くあたりに地元の視点を読みとれる。
2014/01/13(月)(五十嵐太郎)