artscapeレビュー
黒川創『いつか、この世界で起こっていたこと』
2014年02月15日号
発行所:新潮社
発行日:2012/05/31
黒川創の小説『いつか、この世界で起こっていたこと』を読む。3.11に触れた震災文学のなかでも、相当変わった切り口だった。アメリカのエルビス・プレスリーからロシアのチェーホフまで、あるいはユーゴ、関東大震災のときの鎌倉の津波など、時間と空間を超え、ときには地球の外側から見るような視点さえ導入しつつ、短編をつむぐ。震災を日本の出来事として閉じるのではなく、世界史の断片的な記憶と共振する3.11と言えるだろう。
2014/01/05(日)(五十嵐太郎)