2021年09月15日号
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artscapeレビュー

室伏鴻×ASA-CHANG&巡礼『アウフヘーベン Vol. 1』

2014年10月01日号

会期:2014/09/23

CAY[東京都]

室伏鴻はけっして一人では立たない。室伏はつねに誰か「と」立つ。そのためには「誰か」はたしかに必要なのだが、問題は立つそこに「と」があること。室伏鴻と「○○」ないし「○○」と室伏鴻。この「と」が機能すること。それは室伏と誰かが歩調を合わせることを意味しない。息を合わせ、互いの思いを同じにしようとすることは、望ましいというよりむしろせっかくの「と」がもつ危うさや緊張を回避してしまう間違った狙いというべきだ。だからといって、それぞれがただ勝手に自分自身を主張している状態では、やはり「と」で立つ意味はない。さて、その微妙なパランスを模索しながら両者がどう立ったかという点がこの公演の見所となるのだが、その結果もまた述べるのが難しい。ASA-CHANG&巡礼の音楽は、多様な楽器が用いられているばかりではなく、音声サンプリングが多用され、にぎやかで、それ自体が多様な要素の共存する「と」の演奏だった。音楽演奏が始まった後から室伏が登場すると、まるで諸要素が絡まってできたひとつの束の上に、さらにもうひとつの要素を貼付けるみたいで、両者が拮抗するように見えてこない。一番気になったのは、3人の演奏者たちは、つい立ての裏でその姿が一切見えないことだ。気配はちゃんとするので、演奏へのリアクションを室伏は時折するのだが、反対に演奏者からの応答はない。少なくとも見えない。姿を見せぬ者たちと姿をさらした者とはかくも拮抗しづらいのか。いっそ、室伏も姿を隠して、どちらも姿を見せぬままで、声で3人の演奏者と向かい合ったなら、拮抗したのかもしれない。

2014/09/23(火)(木村覚)

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