artscapeレビュー
プレビュー:悪魔のしるし『わが父、ジャコメッティ』
2014年10月01日号
会期:2014/10/11~2014/10/19
KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ/京都芸術センター 講堂[神奈川県/京都府]
最近はcore of bellsとの共作『子どもを蝕む“ヘルパトロール脳”の恐怖』でその無気味な才能を発揮していた悪魔のしるしの危口統之。今作は、彫刻家の父・木口敬三と危口本人が出演する。おそらくリアルな(血縁関係のある)二人の人生と演劇というフォーマットとが重ねあわされたところでどんなことが起きるのかという、ひとつのドキュメンタリー演劇の試みとして注目できる。とはいえ、危口のことである。先述したcore of bellsとの共作では緻密なルールを課したアドベンチャーゲームのように会場を設えつつ、結果的には観客をただただ混乱させ、ひたすら目を瞑った状態でその場歩きをさせる、そういう拷問のごとき「悪巧み」を仕掛ける作家だ。きっと観客はおちおち座っていられまい。ただし、今作でぼくが期待しているのは、観客ではなく危口本人に「悪巧み」の矢が向けられているかもしれぬということだ。この場が危口演出のお化け屋敷のようになるのか? それとも危口本人が自らの変容を促されるトラップを用意しているのか? 観客への仕掛けと危口本人への仕掛けとがあるテンションを生み出しつつ共存していたら、それはそれは面白そうである。
2014/09/30(火)(木村覚)