2021年09月15日号
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artscapeレビュー

core of bells『コメント・メメント・ウィスパーメン』(「怪物さんと退屈くんの12ヵ月」第九回公演)

2014年10月01日号

会期:2014/09/17

SuperDeluxe[東京都]

これはある種のミュージカルだろう。ただし、通常、ミュージカルは音楽(とくにメロディ)に発話が呼応するものだ。けれども、この上演の場合その正反対で、発話が音楽に寄り添うのではなく音楽が発話に寄り添うのだ。メンバーの吉田翔が早口でひとまとまりの台詞を繰り出す。すると、その何度目かから、ドラム、ベース、ギターがその台詞のリズムに合わせて演奏をはじめた。音楽は、言葉の持つ独特のグルーヴを掴まえ増幅させる。それだけで十分聴きごたえのある演奏なのだが、さすがにcore of bellsの場合、そうことは簡単ではない。これにはもともとの設定があり、心霊映像のテレビ番組のなかで、心霊映像を得意とするコメンテイターが映像に相応しいコメントをあれこれ試しているあいだに、暗礁に乗り上げてしまう。コメンテーターを演じていたのは最初、山形育弘だったはずなのだが、いつの間にか吉田がその座を占めてしまう。それも奇怪なのだが、二つの心霊映像(これが結構凝っているのだ。ギャグ度70%、心霊映像度30%といったところか)に付けるコメントは、曖昧なラインをぐいぐい進んでいく奇妙な言葉たちの連なりで、すなわち、台詞は心霊映像とぴったり密着せずに、違和感はどこまでも消えずに漂う。さて、いまのところあげた要素だけでも、心霊映像+コメント+バンド演奏と多層的なのだが、そこにさらに心霊映像とは別のスタジオで彼らが演奏している最中の映像も重ねられる。台詞の内の30%はこの映像とリンクしているようだ。こうして、冒頭であげたような音楽と台詞の関係が反転したミュージカルの要素を基軸と見なせば、その周りに、複数のフリンジが執拗に飾り付けられてゆく。異常な組み合わせが、ほとんど嘔吐感さえも催させるが、それは不意の爆笑も喚起させる。

2014/09/17(水)(木村覚)

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