2020年04月01日号
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artscapeレビュー

富田菜摘 展「平成浮世絵──役者舞台之姿絵」

2015年04月01日号

会期:2015/03/02~2015/03/20

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

羽子板などに用いられる押絵に似たつくりのレリーフ。紙粘土で半立体の人物をつくり、その表面に雑誌のグラビアページがコラージュされている。モチーフはAKB48、嵐、EXILE、吉本芸人やグラビアアイドル。「平成浮世絵」という展覧会タイトルが示すように、彼らの姿は江戸時代の浮世絵に現われる役者や遊女たちの姿に見立てられている。作品から離れて見れば、見得を切る役者や、艶やかな着物をまとった遊女。しかし近づいて見ると別のものが見えてくる。着物が雑誌ページのコラージュでできているのは十分に想像の範囲なのだが、驚かされるのは肌の表現で、これがモチーフとなったアイドルたちの顔写真のコラージュ。目と唇は別だが、顔の表情やディティールは、明るさや色味の異なる顔写真の集合体なのだ。手足や指先の肌も同様に顔写真がコラージュされており、レリーフでありながらも表面的な起伏だけで表現されているのではない。肌に埋め込まれた顔は人面疽のように見えてもおかしくないのだが、不気味さや不快さではなくユーモア、楽しさを感じるところが富田菜摘の作品が秀逸なところだ。そしてコラージュに使用された雑誌は、たとえば女性誌の読者モデルをモチーフにした《江戸読模小町(えどどくもこまち)》では『CanCam』や『ViVi』、嵐をモチーフにした《嵐波五人男》はアイドル雑誌『ポポロ』や『Myojo』と、その人物、グループの特徴を表わすグラビアや記事が見え隠れし、それ自体が「当世江戸風俗図」。ひとつの作品のなかに幾重もの見立てが仕込まれている。富田菜摘のもうひとつの代表作は、金属廃材を用いてつくられた立体的な動物。捨てられたゴミに生命を与えるというコンセプト自体はしばしば見かけるが、それぞれの材料の使いどころや見立ての妙、少しばかりの皮肉と大いなるユーモアを秘めたオブジェは、見立ての力は、本展の作品と共通する富田ならではの表現だと思う。今回の作品は昨年夏のBunkamura Box Galleryでの展覧会(富田菜摘 個展「Wonder Carnival」、2014/8/16~8/24)以降に制作したものとのことで、その制作スピードにも驚かされる。[新川徳彦]

2015/03/19(木)(SYNK)

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