artscapeレビュー
ハル・フォスター『アート建築複合態』(瀧本雅志 訳)
2015年04月01日号
ハル・フォスター『アート建築複合態』(原題:The Art-Architecture Complex, 2011)の邦訳が刊行された。本書は、同著者による『デザインと犯罪』の続編とも言うべきもので、モダニズムとポストモダニズムの二つの事後から現代にわたる「アートと建築の複合」がテーマになっている。そこに流れる問題意識は、絵画/彫刻/建築等の旧来の美術ジャンルの解体にともない、現代建築とアートが境界を融解して、相互に干渉しあうという複合的な状況だ。同書はそこで、建築が決定的な役割を担っていると論じてゆく。著者はまず、60年代のポップアート以降のポストモダンの歴史批評から始める。そしてリチャード・ロジャース、ノーマン・フォスター、レンゾ・ピアノの建築デザインの実践を「グローバル・スタイル」ととらえ、グロピウス、ミース、コルビュジエに相対する三巨匠に数える。次に、美術との接触から活動をスタートさせた建築家たちが扱われる。ザハ・ハディド、ディラー・スコフィディオ+レンフロ、ヘルツォーク&ド・ムーロンである。そのあと、映画・彫刻・インスタレーション等のメディウムの変容について記し、それらが建築の空間に領域を侵入しているという。歴史的な芸術理論の精査と文化批評の深い洞察に裏打ちされた、読者に「読ませる」刺激的な書。[竹内有子]
2015/03/07(土)(SYNK)