artscapeレビュー
科学開講!京大コレクションにみる教育事始
2015年04月01日号
会期:2015/03/05~2015/05/23
LIXILギャラリー[東京都]
京都大学総合博物館、京都大学吉田南総合図書館に保存されている歴史的な物理実験機器、教育掛図、生物学地質学関連の模型・標本約100点を通じて、明治期日本における科学教育の姿をひもとく展覧会。京都大学の前身である旧制第三高等学校(三高、1894年/明治27年発足)は、日本で最初の理化学校として1869年/明治2年に大阪に開講した舎密局(せいみきょく)を始まりとしており、科学教育に力を注いでいた。近代化を推進する人材を育てるために、こうした学校はヨーロッパ製の高価な機材を多数購入してきた。京都大学総合博物館にはこうした三高由来の多様な物理実験機器が約600点保存されている。これらの機器は教場の準備室の片隅で長い間埃にまみれて放置されていたという。現在は使われていない機器や、使用方法がわからない装置が多数あるなかで、永平幸雄・大阪経済法科大学教授らは残されている機器の購入記録やメーカーのカタログなどを渉猟し、品名や使用法、購入年、価格、納入業者や製造業者を同定し、機器の歴史的意義を明らかにしてきた。実験機器の詳細を明らかにすることは、三高の教育、黎明期の日本の科学教育の歴史を明らかにすることでもある。本展で個々の機器にわかりやすい解説が付されているのはこの調査研究の成果だ
。とはいえ、学術上の意義とは別に、これらの古い実験機器に独特の美を感じるのは不思議である。特定の実験のみに対応するために単純な構造を有する装置の機能美。真鍮などの金属でつくられた機器の質感と重量感。鉱物や宝石のレプリカ、生物標本、解剖模型、教育掛図も、そのビジュアルがじつに魅力的なのだ。本展を見た人は、東京大学の資料が展示されているインターメディアテクの展示を思い出すと思う。生物学・地質学関連資料が多いインターメディアテクの展示に対して、三高コレクションは物理実験機器が中心。LIXILギャラリーとインターメディアテクは徒歩で10分ほどの距離にあるので、両者を併せて見たい。[新川徳彦]2015/03/12(木)(SYNK)