artscapeレビュー
山本太郎×芸艸堂コラボレーション展「平成琳派 ニッポン画×芸艸堂」
2015年04月01日号
会期:2015/02/25~2015/03/28
イムラアートギャラリー[京都府]
「ニッポン画」という独自のスタイルを提唱する画家、山本太郎と日本唯一の手木版和装本出版社、芸艸堂とのコラボレーション。より正確には、芸艸堂がとりもった、山本太郎と明治の図案家、神坂雪佳とのコラボレーションである。山本の作品としては、《風神ライディーン図屏風》とほか2点が、神坂雪佳の作品としては、代表作、図案集『百々世草』から《狛児》や《八ツ橋》など5点が出品されている。山本の作品、《風神ライディーン図屏風》は、あの俵屋宗達の《風神雷神図屏風》を下敷きに往年のテレビアニメで活躍した主役ロボットと特撮テレビドラマの変身ヒーローが神々に扮した作品である。江戸時代初期の画家、俵屋宗達(生没年不明)は大胆な構図と明快な色彩、華やかな装飾性で知られる。およそ100年後、宗達の作風に学んだ尾形光琳(1658~1716)が登場し、さらにそのおよそ100年後ならぬ200年後に雪佳(1866~1942)は光琳らの作風を様式化して光琳模様を創出した。そして、さらにおよそ100年後の平成の時代、山本(1974~)は宗達や雪佳を引用しながら独自の作風を探求している。しかし本展の主役は、なんといっても《信号住の江図》である。芸艸堂が版木を所有している雪佳の作品、《住の江図》に山本が1本の信号機を描き足して、新たに刷り上げられた作品である。浜辺の「松」の木に人々に「待つ」ことを強いる信号機を掛けたというわけだ。《風神ライディーン図屏風》も宗達あってのものという意味では共作といえなくもないかもしれないが、《信号住の江図》は文字通り時代を超えたコラボレーションであり、その立役者は芸艸堂の技と木版という媒体である。
ところで、山本太郎の「ニッポン画」とは次のようなものだそうだ。「一、現在の日本の状況を端的に表現する絵画ナリ。一、ニッポン独自の笑いである「諧謔」を持った絵画ナリ。一、ニッポンに昔から伝わる絵画技法によって描く絵画ナリ。(ニッポン画家・山本太郎公式ウェブサイトより)」日本画から現代美術へのアプローチといえば、「スーパーフラット」という概念を提示した村上隆や、合戦図や鳥瞰図をモチーフにした山口晃、「ネオ日本画」を標榜する天明屋尚ら同時代の美術家たちが想起される。なかではもっとも若い世代にあたる山本は少し滑稽で優しく和やかな雰囲気に特徴があり、雪佳の作風とも比較的馴染みやすい。その意味でも、今回のコラボレーションは絶妙の組み合わせであった。
京都では、琳派400年記念祭関連のイベントが次々と開催されるなか、PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015もはじまった。国際的な視点から日本を見直したとき画家たちは幾度となく宗達や光琳に立ち返ってきたが、わたしたちも身をもってその回帰を体験できるまたとない機会かもしれない。[平光睦子]
2015/03/18(水)(SYNK)