artscapeレビュー

APPLE+ 三木健|学び方のデザイン「りんご」と日常の仕事

2015年04月01日号

会期:2015/03/05~2015/03/31

ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]

デザイナー三木健氏が、大阪芸術大学の教授としてデザインを初めて学ぶ1年生のゼミナールの課題としたのが「りんご」。「りんご」をデザインの視点から観察・分析し、同時に観察と分析の方法を考え、新たな表現を導く。そうしたゼミナールの課題と学生たちの取り組み、生み出された成果が1階展示の主題である。課題が「りんご」である必然性はあるのだろうか。じっさいよく考えれば他にも適した題材はあるのかもしれない。しかし、組み立てられたカリキュラムを追っていくと、「りんご」がじつによく考えて選ばれたモチーフであることがわかろう。誰もが知っている身近なくだもの。概念的なりんごの姿はあっても、自然の産物であるからひとつとして同じ形、同じ色のものはない。詳細に観察していくと、私たちはりんごのことを知っていると思い込んでいるだけに過ぎないことに気が付く。手触り、味、食感もまたりんごの重要な要素だ。観察が終わったらりんごから得られた形、色などを制約条件として造形を行なう。机上の作業だけではなく、りんごを食材としたパーティーを企画することでコミュニケーションもデザインされる。学生たちはデザインを学ぶと同時にデザインの学び方も学び、人と人との結びつきも学ぶことになる。非常に優れた教育の実践記録としての展覧会はこのレビューが掲載されるときには終了してしまっているが、三木氏が自らカリキュラムを解説する映像が公開されているのでぜひ見て欲しい。造形教育に携わる人にはきっとなにかしらのヒントが得られるはずだ。[新川徳彦]


OSAKA DESIGN FORUM 2012 三木健 講演

2015/03/05(木)(SYNK)

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