artscapeレビュー

写真分離派「写真の非論理──距離と視覚」

2017年03月15日号

会期:2017/02/09~2017/03/26

NADiff Gallery[東京都]

1963年生まれの3人の写真家(鷹野隆大、松江泰治、鈴木理策)と2人の批評家(清水穣、倉石信乃)によって2010年に結成されたのが「写真分離派」。その後も、デジタル写真vs. 銀塩写真といった不毛な議論を超えて、写真の表現可能性を本質的に見つめ直す活動を続けてきた。NADiff Galleryでは2回目となる今回の展示には、鷹野隆大と松江泰治が写真作品を、倉石信乃が映像作品(須山悠里との共作)を発表し、清水穣がコメントを寄せていた。鈴木理策が不参加(脱退ではないようだ)なのが気になるが、メンバー個々の現時点での問題意識がしっかりと表明された、充実した展示だった。
鷹野の「ピントが合う少し前の風景」(2010~13)は、いわゆるシャッターチャンスの前後の、ややブレた画像によるヌード/ポートレートのシリーズである。そこでは「距離を測り、視角を決める」という、写真撮影における選択のあり方が問い直されている。松江はツァイト・フォト・サロンでのデビュー個展(1985)で展示された「TRANSIT」シリーズと、未発表の《Hashima》(1983)を合体させてモニターで上映した。過去の作品への自註/再構築という趣がある。倉石の「写真の位置、メモ」は、1923年の関東大震災直後の東京を撮影した水彩画家、三宅克己の写真の複写にコメントを加えて、東日本大震災と写真との関係を考察しようとしている。それぞれ方向性はバラバラだが、「距離と視覚」という問題意識が、緊張感のある取り組みの姿勢で共有されていた。
なお展覧会にあわせて、2010年以来の活動のレポートが同名の書籍にまとめられた(発行=エディション・ノルト)。メンバーによる対談、座談会の記録のほか、須田一政、杉本博司、荒木経惟へのインタビューも含んでおり、読み応えのある内容である。

2017/02/15(水)(飯沢耕太郎)

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