artscapeレビュー

プレビュー:國府理 「水中エンジン」再始動!!!

2017年03月15日号

会期:2017/04/01

京都造形芸術大学 ULTRA FACTORY[京都府]

2014年に急逝した國府理の《水中エンジン》(2012)は、國府自身が愛用していた軽トラックのエンジンを剥き出しにして巨大な水槽の中に沈め、稼働させるという作品である。動力源となる心臓部が、水槽を満たす水によって冷却されて制御されつつ、部品の劣化や浸水など頻発するトラブルの度に一時停止とメンテナンスを施されて稼働し続ける不安定で脆い姿は、原発に対する優れたメタファーである。何本ものチューブや電気コードを接続され、放熱が生む水流の揺らぎと無数の泡のなか、不気味な振動音を立てて蠢くエンジンは、培養液の中で管理される人造の臓器のようだ。エンジンから「走る」という本来の機能を奪うことで、機能不全に陥ったテクノロジー批判を可視化して行なうとともに、異物的な美をも提示する作品であると言える。
國府の創作上においても、「震災後のアート」という位相においても重要なこの作品は現在、インディペンデント・キュレーターの遠藤水城が企画する再制作プロジェクトにおいて、國府と関わりの深い技術者やエンジン専門のエンジニアらの協力を得ながら、再制作が進められている。解体され、オリジナルの部品が失われた《水中エンジン》を再制作し、再び動態の姿での展示が予定されている。國府自身が悩み手こずった作品を、残された記録写真や映像、展示に関わった関係者の記憶を頼りに再現する、非常に困難な作業だ。4月1日には、再制作の作業現場である京都造形芸術大学内のULTRA FACTORYにて、一般公開とトークが予定されている(15~17時、要予約)。
その後は、「裏声で歌へ」展への出品(小山市立車屋美術館、4月8日~6月18日)、オリジナルが発表された京都のアートスペース虹での展示「國府理 水中エンジン redux 」(7月4日~7月30日)と展開していく。一連の展示やトークイベントを通して、再制作という営為とオリジナルの関係性、不完全さや危険性を内包した作品の動態的なあり方が提起する「自律性」への問い、國府作品の再検証、原発への批評性など、複数のトピックを提起する機会となるだろう。まずは、《水中エンジン》が再び動き出す日を楽しみに待ちたい。


《水中エンジン》再制作の作業の様子


公式サイト:https://engineinthewater.tumblr.com/

2017/02/27(月)(高嶋慈)

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