2024年03月01日号
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artscapeレビュー

草間彌生 わが永遠の魂

2017年03月15日号

会期:2017/02/22~2017/05/22

国立新美術館[東京都]

まず最初の部屋は、大きなキャンバスを3枚つなげた巨大な富士山の絵。なんじゃこりゃー? 次の部屋に進むと……またもや、なんじゃこりゃー? 向こう側の壁までぶち抜きの大空間に、一辺2メートル近い正方形のキャンバスが数百枚、びっしりと並んでいる。水玉あり網目あり、ジグザグありハッチング(平行線)あり、顔や目玉らしき形態あり、それらが自由に組み合わされ、原色の絵具で自在に塗りたくられている。新作の「わが永遠の魂」シリーズだ。これは壮観! その次の部屋に入ると、ようやく1940-50年代の最初期の作品に出会える。幻覚から逃れるために描いたという絵画で、偶然なのかポロックや河原温の初期作品を彷彿させる作品もある。その次の部屋は、渡米後に編み出した網目模様を無限に繰り返していくパターンペインティングが続き、さらにハプニングの映像、無数の突起や水玉模様のついたポップなオブジェなど、60年代に表現が多様化していくのがわかる。ここまでが前半。
後半は、アメリカから帰国後の70年代のコラージュから始まる。ここでハッと思った。これって最初期の幻覚絵画とよく似てなくないか? 1973年に帰国したのも体調不良のためだったというし、いわばフリダシに戻ったような感じ。さらに80-90年代は、50-60年代の作品をシャッフルしたようなポップなパターンの繰り返しとなって、再び大空間の「わが永遠の魂」に戻ってくる。ああなるほど、「わが永遠の魂」シリーズはこれまでの彼女の「幻覚」「繰り返し」「ポップ」の3要素を自由自在に組み合わせたもんなんだと納得。草間の個展はこれまで何度も見てきたが、今回ほど腑に落ちたことはない。ぼくのなかではすでに陳腐化していた草間彌生像が、何十年ぶりかで更新された感じ。これもすべて「わが永遠の魂」の思い切った展示のおかげだ。

2017/02/21(火)(村田真)

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