2022年09月15日号
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artscapeレビュー

岩渕貞太『untitled』

2010年11月01日号

会期:2010/10/14~2010/10/16

STスポット[神奈川県]

タイトルがもたらしたものであるかもしれないが、目指すべきところが曖昧でとらえにくいと感じさせられた。岩渕貞太が目下日本のダンス・シーンのなかで際立って真面目で、魅力的な外見を携えた人物であることは間違いない。しかも今回は大谷能生を音楽担当に招いてのソロ公演。入念な準備がなされたと想像される。しかし、舞台上の岩渕は正直難解だった。ダンス作品が難解になるのは、多くの場合、振付を通して観客に伝えたいことが不明確なとき、身体の動く動機が観客に伝わっていないときである。目の前の身体がいま、なぜ、このような状態を示しているのか? 基本的に言葉を用いない故に、ダンス作品はわかりにくくなりがちで、身体が生々しくさらされれば、その分イメージは乏しく解釈の手がかりが乏しくなる。もう少し記号的あるいはキャラ的な作品作りでもいいのではなどと思ってしまう。しかし、そうしたやり方に岩渕の興味はない。「身体が動く」という純粋でとらえがたく、直接的な表現の可能性にこそ、岩渕の賭けはあるはず。確かに、ハッとする瞬間はあった。奇妙な怪物の孤独な遊戯にぞっとし、心を奪われた。そういう部分をもっと執拗に推し進めてもいいはずだ。残念なのは、音楽との関係が単調に思えたこと。大谷の具体音(小さい容器に小物を入れて回している音など)を用いた音楽は、ノイズ=前衛=難解なんて短絡的推論に聴く者を陥らせることなく、きわめてキャッチーかつリズミカルで、構造も明瞭、故に充分ポップだった。そうした大谷のアプローチに応答する試みが岩渕から出ていたら印象は違っていただろう。

2010/10/16(土)(木村覚)

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