artscapeレビュー
花岡伸宏「ピンセットの刺さった円柱の飯は木彫りの台を貫通する」
2010年11月15日号
会期:2010/09/21~2010/10/03
ギャラリー恵風[京都府]
米粒の塊の円柱が木彫の少女像の台座を貫通しているという個展のタイトルそのままの立体作品が強烈。ほかに壁面を埋め尽くすように貼られたコラージュ作品、少年時代の作家自身や家族のスナップ写真をつないだ映像作品も発表されていた。コラージュされたそれらの要素の多くは、記憶や象徴するもののイメージを喚起して想像をかき立てるのだが、すべてをつなぎ合わせて物語を連想することは難しい。想像すればするほど意味がわからないものになっていく。なのに作品を見ているとにやっと笑いがこみ上げてくるのは、脈絡のないモチーフの組み合わせとタイトルが絶妙に響き合うイメージで、シュールなマンガのように、新たな連想を誘うせいかもしれない。どこかおどけた花岡の表現の雰囲気は、すぐになにか意味を読み取ろうとしたり、常識にとらわれるこちらの感覚を嘲笑っているかのようにも思えるのだが、しかしちっとも嫌悪感はない。不条理な世界でありながら、痛快な印象なのが不思議だ。
2010/10/03(日)(酒井千穂)