artscapeレビュー

第3回写真「1_WALL」展

2010年11月15日号

会期:2010/09/21~2010/10/14

ガーディアン・ガーデン[東京都]

写真「ひとつぼ展」から名前が変わって3回目の「1_WALL」展。「ポートフォリオレビュー」による二次審査というハードルができたことで、たしかに全体的に出品作のレベルは上がってきている。今回は金瑞姫、天野祐子、いしかわみちこ、神崎雄三、伊藤哲郎、山野浩司の6名が二次審査を通過し、グランプリを決定する最終プレゼンに臨んだ。その結果グランプリに選ばれたのは、「光を見るための箱」というコンセプトで、さまざまな部屋とその住人をしっかりと撮影した金瑞姫の作品「Light」だった。
その選出に特に異論はない。金の作品の安定感とクオリティの高さは、やはり一歩抜けている。審査員(金村修、鈴木理策、鳥原学、町口覚、光田ゆり)も、2名連記の最終投票で全員が彼女に票を入れており、他の出品者とは圧倒的に差がついていた。ただ、この2名連記というのがやや問題で、もしかすると各審査員の一位ではなく、二位の票が集中したということも考えられる。そのあたりが、投票による審査のむずかしいところだろう。
個人的には、金瑞姫のそつのない平均点の高さよりは、いしかわみちこ「A」の歪んだアンバランスさや、天野祐子「around a pond」の何かが出てきそうな茫漠としたスケール感の方に魅力を感じた。とはいえ、金ももちろん才能あふれる作家で、次作では大きく飛躍しそうな予感もする。一年後に開催される予定の彼女の展覧会が、どんなふうになっているかが楽しみだ。

2010/10/13(水)(飯沢耕太郎)

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