artscapeレビュー
長尾ふみ「観測」
2010年11月15日号
会期:2010/10/04~2010/10/10
大阪成蹊大学芸術学部ギャラリー〈spaceB〉[大阪府]
大阪成蹊大学芸術学部美術学科に在籍する長尾ふみの個展。広くてとても静かな学内のギャラリー空間は、故郷の家の廊下や風呂場、ベランダ、学内の建物など、身近な光景を描いた長尾の作品の透明感を際立たせている印象だった。はかなく移り変わる時間の趣きをたたえた、その瑞々しい描写がいっそう魅力的に感じられる。強烈な日差しのまばゆい光、それをうけてざわめくような黒々とした木陰の様子、冷えた空気の質感、水面に反射する鈍い空の色、うっすらと積もった雪に覆われたグラウンド、どれも日常の何気ない風景であったり、無機質な建物が画面の大部分を占めるものもあるのだが、いきいきとした動的な情景として映り、心に残る。物ごとを丁寧に観察する長尾のひたむきなまなざしがうかがえる清々しい会場だった。
2010/10/04(月)(酒井千穂)