artscapeレビュー
大西伸明「新しい過去」
2010年11月15日号
会期:2010/10/01~2010/10/30
ナディッフ[東京都]
いつもの入口が閉ざされているため、脇の通用口から入っていくと、ギャラリーいっぱいに銀色のシートに覆われた小屋が建っている。あれ? 大西伸明ってトリッキーな作品をつくる人じゃなかったっけ、小屋のなかにあるのかなと思って周囲をめぐるが、どこからも入れない。奥に錆びた鍵と空気の抜けたバスケットボールが展示され、一部が透明になっていて、ああこれこれ。ありふれた物体を型取りした透明樹脂に色を塗り、オリジナルそっくりに再現した作品。すべて完璧に再現したら「本物」と区別がつかなくなるので、一部を透明なまま塗り残してある。鍵だったら端っこが透明になっているので、鍵そのものが消えかかっているように見えるのだ。問題の小屋も、銀色のシートを透明樹脂で型取り着色した「つくりもの」だった。2階には、有刺鉄線やハイヒール、壊れた椅子、木の葉などが展示され、すべて一部が透きとおっている。これは見事。
2010/10/19(火)(村田真)