artscapeレビュー
久保田弘成 個展「廻船仁義~北九州漁船大回転」
2011年02月01日号
会期:2011/01/07~2011/01/18
演歌にあわせて廃車をぐるぐると回転させる久保田弘成の新作展。今回は、廃車ではなく廃船を回転させた北九州は門司でのイベントのメイキング映像のほか、ドローイングや立体作品などを発表した。撮影と編集を専門家に一任したからなのか、同画廊で催された前回の個展で見た映像とは比べ物にならないほど映像のクオリティが高まっていたが、久保田のパフォーマンスの本質そのものはつねに一貫している。それは、男気の過剰な自己演出だ。映像を見ると、褌や作業着、くわえタバコ、演歌といった職人気質を物語る記号や身ぶりがあふれていることに気づく。ただ、その男気が強調されればされるほど、どこかで違和感が残されるのも事実だ。屹立する男根を直接的に描いたドローイングはともかく、同じかたちの立体作品は不自然なほど直立しており、その人工性が久保田の「男気」の人為性を透かしてしまう。いってみれば、チンピラが悪人として振舞えば振舞うほど、善人の部分がクローズアップされてしまうのと同じ理屈だ。この逆説の論理を突き詰めることには多くの難問が待ち受けているはずだが、久保田はそれでもあえてその道を突き進むだろう。それが「男気」のもっとも健全なありようだからだ。
2011/01/11(火)(福住廉)