artscapeレビュー
大橋可也(構成・振付・演出)『驚愕と花びら』
2011年02月01日号
会期:2011/01/08~2011/01/09
シアター・バビロンの流れのほとりにて[東京都]
ダンスワークショップ「疾駆する身体」から生まれた作品。舞台に登場した10人ほどのダンサーのほとんどはレギュラー・メンバーではなく、必ずしも大橋の振付に対して感度が高い者ばかりではなかった。しかしその分、大橋の方法論が汎用可能であることを確認できた上演だった。大橋の方法論の根底にあるのは、いうまでもなく舞踏である。舞踏は、能動的というよりも受動的なダンスである。動くというよりも動かされる動き。そこには、自分を動かすなにかが「気配」として舞台に存在していなければならない。そして、そうした存在が一体何者なのか、ひとつの解釈として呈示されていなければならない。例えば土方巽が「風だるまの話」のなかで「悪寒」と呼んだようななにか。大橋はときに、そこに「格差社会の不安」を読み込んだりもしたが、今作も夢遊病者のように舞台をうろつくダンサーたちによって、寄る辺のない若者の姿が立ちあがっていた。暴力的な印象も強い大橋作品だが、じつは繊細で美しい。ところどころで現われるダンサーのユニゾンは、偶然のもつ美しさを描き出していた。
2011/01/09(日)(木村覚)