artscapeレビュー
地下鉄におけるパブリックアートの変遷
2011年02月01日号
会期:2010/11/23~2011/01/16
地下鉄博物館[東京都]
東京の都市生活者にとって地下鉄は必要不可欠な移動手段。その交通網の結節点である駅にはしばしばパブリックアートが設置されているが、本展はその歴史的成り立ちと現在の分布図をまとめた展覧会。パネル展示はいかにも味気なかったけれど、それでも粘り強く見ていくと、1961年に新宿駅のプロムナードに設置された《協力の像》を皮切りに、続々とアート作品が地下鉄の駅に広がっていく様子がわかる。さらに、パブリックアートの全体がそうであるように、地下鉄のパブリックアートもまた、平和や環境といったイデオロギーに奉仕するものとして期待され、実際そのように解釈しうる作品が数多いこともよくわかる。「ほっと一息」「ほんのり和み」「ゆとりや潤い」の気持ちを感じることが求められているわけだ。これがじつに狭小な芸術観の現われであることは言うまでもないが、だとしても不思議なのは、なぜ千住博や山口晃が採用されながら、佐藤修悦や淺井裕介が入っていないのかということだ。佐藤修悦が全面的にプロデュースした駅であれば、鉄道の駅に期待されている役割を一挙に満たすことができるはずだし、じっさいに乗降客の荒んだ気持ちを少なからず和らげることもできるだろう。
2011/01/13(木)(福住廉)