artscapeレビュー

青木千絵 展 URUSHI BODY

2011年02月01日号

会期:2011/01/07~2011/01/28

INAXギャラリー2[東京都]

漆とはかくもエロティックなものだったのか。青木千絵が制作した女性像を目の当たりにすると、伝統工芸としての漆という既成概念がみごとに覆される。漆で制作された女性像は、黒光りした表面と屈折した身体のかたちが女性の滑らかな皮膚感を再現しているようで、艶かしいエロティシズムを感じてならない。かといってすべてを具象的に表現しているわけではなく、上半身を丸く抽象化したり、他の下半身と連結させるなどして、下半身の造形に眼を巧みに誘導するところも、そうしたエロスに拍車をかけていたようだ。内実を欠いた表面の円滑性。スーパーフラットが目指していた理想は、じつは伝統工芸のなかですでに実践されていたのではなかったか。青木千絵の漆は、次の時代を切り開く鍵が、必ずしも新たな表現様式だけに隠されているわけではなく、伝統的な工芸のなかにもひそんでいることを予感させた。

2011/01/13(木)(福住廉)

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