2019年10月15日号
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artscapeレビュー

2011年05月15日号のレビュー/プレビュー

「台湾集合住宅的未来予想図」展 関連イベント

会期:2011/04/09

府都(建設会社)[台湾・台南市]

謝宗哲が企画した12組の若手建築家による「台湾集合住宅的未来予想図」展の関連イベントに招かれ、レクチャーを行なう。五十嵐は「漫談日本集合住宅状況」と題して、nLDKなど基本的な住宅事情を説明しつつ、90年代以降の重要な作品をレビューし、南泰裕は日本の若手建築家と自作を紹介した。台湾において90年代はアメリカのポストモダンの影響が強かったが、ゼロ年代以降、日本の現代建築への関心が高まり、会場は満員だった。府都の建設会社のビルの1、2階を用いたギャラリーは、なかなか日本にもない恵まれた展示空間である。そこに主に独立前の30代の建築家が集結し、実際にプロジェクトが予定された2つの敷地に対して、ユニークな集合住宅を提案した。次世代のムーブメントの熱さを感じさせる。謝は、村上春樹の『1Q84』に触発され、ビッグブラザー(おそらく、李祖原?)に代わる、リトル・ピープル・アーキテクツを結成しており、王 、方 、林建華を含む6組のメンバーがそれぞれに別の建築家を推薦し、今回、12組が出そろった。

2011/04/09(土)(五十嵐太郎)

瓜生祐子 展

会期:2011/03/29~2011/04/17

neutron kyoto[京都府]

淡色系のやわらかい画面の印象と、鉛筆で描かれた細やかな輪郭線にただでさえ目が誘い込まれるのだが、私が女だからなおさらだろうか。ケーキやクリームあんみつといった食べ物のモチーフをのどかな山里や山脈の風景に見立てた作品世界がそれに輪をかけて気持ちをくすぐり、ついつい長いあいだ画面を凝視してしまう。アクリル絵の具でキャンバスにイメージを描いた上に綿布を貼り、それから鉛筆で線を描いているという画面の色彩は一見、染めもののような趣きもある。円形や四角形のキャンバスはそれぞれが食べ物を盛りつける器に見立てられていて、かわいらしくもあるのだが、ただそれだけではなく、甘い香りや食べ物が焼けるときの香ばしい匂いなど、食欲を刺激する嗅覚の記憶をも連鎖的に誘発する要素になっていた。

2011/04/10(日)(酒井千穂)

伊東豊雄建築設計事務所《台中メトロポリタンオペラハウス》

[台湾台中市]

竣工:2013年

伊東豊雄事務所の佐野健太の案内により、台中のオペラハウスの現場を見学した。一年前に訪れたときは、地面を掘った穴しかなかったが、現在は大きなフライタワーの鉄骨が2つ立ち上がり、最大高さのヴォリューム感も想像できるようになった。しかも現場の横には、さまざまな曲率があり、もっとも施工が難しい部分のモックアップがつくられており、ユニークな空間体験もイメージしやすい。それにしても、設備のおさめ方が大変そう。力技の建築である。また、敷地のまわりには、すでに投機目的で、オペラハウスを囲むように、タワーマンションが建設されており、この建物が都市の価値をあげるものとして認識されているようだ。

2011/04/10(日)(五十嵐太郎)

威尼斯建築雙年展台灣館2000-2010(Taiwan at the Venice Biennale of Architecture)

会期:2011/03/19~2011/05/22

国立台湾美術館[台湾・台中市]

台中の国立美術館へ。ここがサポートするヴェネチアビエンナーレ建築展における台湾館の2000年から10年までの内容を振り返る展覧会である。日本では同じ役割を国際交流基金が担当しているが、同じ主旨の展覧会を開催したらよいのではないか。いい企画だが、予算の関係か、内容が均等に薄かったのは残念。メリハリをつけて、どれかを強調し、例えば、筆者が代表選出の審査に関わった2010年の「休息中」を会場の外に出し、ヴェネチアで実現できなかった当初のアイデア、すなわち空気でふくらむ家具を実現するなど、他にもやり方はあったのではないか。

2011/04/10(日)(五十嵐太郎)

河合晋平博物館

会期:2011/04/06~2011/04/12

大阪タカシマヤギャラリーNEXT[大阪府]

スプーン、ロールパン、ゴムチューブ、プッシュピン、電球など、その制作環境や身の周りにあるさまざまなものを進化する生命体に見立て、作品化して発表している河合晋平。百貨店内のギャラリーという、いつもとは異なる雰囲気の空間で個展が開催された。近年の個展では毎回展示されている、河合のこれまでの発表作品の歴史をひとつに纏めた《存在物体系系統樹》は、まるで自然科学系の博物館にある解説年表のようで面白いが、初期から最新作までが並んだ今展は、空間そのものがまさに博物館の展示室のように設えられていて、作家の世界観や作品のユニークな魅力がいっそう際立っていた。作品の細部を備え付けられた10数センチのルーペで覗き見るコーナーや、店のディスプレーさながらに美しく作品を陳列した壁面など、展示の工夫がすごいこともさることながら、電子部品も虫ピンも、作品化されたそれらがアクセサリーか装飾品の類いに見えてくるのも面白い。デパートの買い物客だろうか、初老の夫婦(?)が作品に顔を近づけて「奇麗やねえ、細かいねえ」と熱心に見ていたのが印象的だった。


河合晋平博物館、会場風景

2011/04/11(月)(酒井千穂)

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