artscapeレビュー

2011年05月15日号のレビュー/プレビュー

台北の設計事務所、施設訪問

会期:2011/04/11

LEAD DAO(利道科技工程公司簡介)、H2R architects、ルメリディアン台北ホテル[台湾台北市]

豊田啓介が率いるNOIZ ARCHITECTS のChunwei Lee の案内により、半日、台北をまわった。最初は、構造、環境、設備、施工に関連して、デジタル技術の側面からコンサルティングとサポートを行なう事務所、Lead Dao(利道)を訪問した。もともとは工業製品の仕事を行なっていたが、伊東による台中のオペラハウスと高雄のスタジアム、高松伸やロジャースによる高雄の地下鉄駅、メカノの作品など、複雑な造形の建築プロジェクトにおいて、大きな役割を果たしている。
続いて、淡江大学のインキュベーション施設に拠点をおく、H2Rのメンバーと会う。元OMAの白井宏昌、スティーブン・ホール事務所出身の平原英樹、台湾の張容豪による国際的な若手ユニットで、大きなプロジェクトのプレゼンテーションの直前だった。最後は、台北のメリディアン・ホテルへ。大量の現代アートを展示し、へたな美術館よりも多い。一階にはNOIZ ARCHITECTSが手がけた、紙によるランダムなハニカム構造のアート作品を置く。また同ホテルにおいて、彼らはインテリアデザインとして、見る角度によって波形が変わる新しいシャンデリアも手がけている。

2011/04/11(月)(五十嵐太郎)

東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク「アーキエイド」

ArchiAid[アーキエイド]

東日本大震災を契機に、その復興をサポートするための国際的な建築家のネットワークが立ち上がった。アーキエイドがめざすのは、緊急避難→仮設住宅→まちづくりという一連のプロセスにおけるとくに第三段階において、リサーチや提案などを通じ、建築家のスキルを生かすこと、被災した東北エリアの教育環境を支援すること、関連するリサーチや活動のアーカイブをつくること、そしてこれらの目的のために使える寄付金を集めることである。まだホームページが開設されたばかりで、始まったばかりの運動体だが、長く継続していくことが重要だろう。

2011/04/11(月)(五十嵐太郎)

フレンチ・ウィンドウ展

会期:2011/03/26~2011/08/28

森美術館[東京都]

震災のため開催が1週間ほど遅れた企画展。遅れただけでなく、天井から吊ったりする作品はいまだ展示を見合わせている。まあ展覧会自体が中止にならなかっただけでもよしとしなければ。「デュシャン賞に見るフランス現代美術の最前線」とのサブタイトルのついた同展は、フランス最大の現代美術コレクターの団体ADIAFが主催する「マルセル・デュシャン賞」の10周年を記念し、グランプリ受賞者らの作品やデュシャンの代表的レディ・メイドを出品するもの。驚いたのは、フランスには現代美術コレクターの団体が(しかも複数)あること、そのひとつがデュシャン賞を主催していること。これはおそらく年々注目度を高めているイギリスのターナー賞に対抗しようとしたものだろうけど、それをコレクターの団体が(ポンピドゥー・センターやFIAC[International Contemporary Art Fair]とともに)主催するというのだからスゴイというか、むしろマーケットの動向に左右されないか心配になるくらいだ。作品はデュシャン賞らしくレディ・メイドが多いなか、リヒターばりの都市風景を描くフィリップ・コニェ、煙の上がる中世の街並を他人に描かせたローラン・グラッソらの絵画や、廃物を寄せ集めたトーマス・ヒルシュホーンのインスタレーションにそそられた。ちなみにデュシャン作品はすべて国内(大半は京都近美)からかき集めたもの。日本はデュシャンの大コレクターなのだ。でもこれはレディ・メイドのレプリカのマルチプルだから、比較的入手しやすいけどね。

2011/04/12(火)(村田真)

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MAM PROJECT 014:田口行弘

会期:2011/03/26~2011/08/28

森美術館ギャラリー1[東京都]

ギャラリーは無惨にも壁が破壊され、向こうが丸見え。その解体した建材で椅子や小屋がつくられ、なにか工事現場のように活気があって楽しい。ビデオを見ると、数枚の板が外に出てあっちこっち移動するさまをアニメ化していて笑える。その板もこの壁をはがしたものらしい。反対側の壁には鉛筆や水彩でラフに描かれたスケッチが数百枚びっしり貼られている。これを見ると相当の才能であることがわかる。「フレンチ・ウィンドウ展」に放り込んでもヒルシュホーンと1、2位を争うほどの実力であることは間違いない。帰りにショップに寄ったら建材の破片に絵を描いたものを売っていたので、迷わず買った。

2011/04/12(火)(村田真)

東北大学による東日本大震災1ヶ月後緊急報告会

会期:2011/04/13

トラストシティ カンファレンス・仙台 5階[宮城県]

仙台のトラストシティ5階の会場にぎりぎりで到着すると、満員で立ち見だった。発表は建築よりも土木寄りだったが、だからこそ普段考えていなかった視点が多く興味深い。まだわからないことが多いことも、研究者から真摯に語られたのは印象的である。それは報告会の質疑応答でも繰り返されたシーンだが、安全か、安全でないといった白黒を常に要求し、(もっとも不安な)わからないという選択肢を排除するメディアの言語とは違う。筆者にとっては、東日本大震災について、まだ知らない事例が多いことを改めて知ることができたのが、最大の収穫だった。阪神・淡路大震災がピンポイントだったのに対し、今回は全貌をすぐ把握するのには、あまりにも広域なのである。

2011/04/13(水)(五十嵐太郎)

2011年05月15日号の
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