2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2011年05月15日号のレビュー/プレビュー

澄毅「光」

会期:2011/04/22~2011/04/28

Port Gallery T[大阪府]

その「写真新世紀大阪展」で佳作入賞者として作品が展示された澄毅(すみ・たけし)の個展が、大阪・京町堀のPort Gallery Tで開催されていたのでそちらも見てきた。
「光」と題されたシリーズは、A0の大判サイズのプリント2点とA1サイズのプリント15点で、壁にピンで止められている。澄の呉市在住の祖父は戦艦大和の建造にもたずさわった技術者で、広島の原爆投下も目撃しているのだという。その祖父の写真アルバムに貼られた写真を複写して画用紙にプリントし、被写体の輪郭をなぞるように小さな穴をたくさんあける。その裏側から光をあてて、それが白っぽい点の集合として見えてくる様を撮影した写真が、このシリーズの骨格を形成している。古い写真が現実の光に晒されることで、あらたな生命力を得て再生しているといえるだろう。さらに澄自身の身辺を撮影した写真を合わせることで、過去と現在、記憶と現実とが混じり合い、溶け合うような効果が生じる。同じテーマで制作された映像作品(約8分)も含めて、よく練り上げられたコンセプトがきちんと形になったいい作品だと思う。
ただ、会場のインスタレーションにはもう一工夫必要だろう。A1サイズのプリントは、大きさや展示の仕方がやや中途半端に感じる。もう一回り小さなサイズにするなど、アルバムのページをめくっていくような親密な雰囲気を大事にした方がいいと思う。

2011/04/23(土)(飯沢耕太郎)

彰国社引越し

彰国社[東京都]

東日本大震災の影響により、急きょ彰国社は老朽化した自社ビルを出て、そう遠くはない新しい仕事場に引越しを決めた。その際、被災した東北大に本や雑誌を寄贈いただけることになり、普段は入れない資料室で作業する機会を得た。竣工当初の彰国社ビルの写真を見ると、増築前のために、プロポーションは細く、また両側には小さな家屋が並ぶ。90年代からここのビルには何度も打ち合せで訪れたが、会議室の窓から見る市ヶ谷駐屯地の風景も変わってしまった。引越が終わると、すぐに解体するという。自分がいま何階にいるのかわからなくなるようなステップ・フロア、力強い手すりなど、失われることを知って、改めて思い出深い空間であることに気づく。

2011/04/24(日)(五十嵐太郎)

手塚治虫のブッダ展

会期:2011/04/26~2011/06/26

東京国立博物館[東京都]

サブタイトルに「仏像と漫画でたどる釈迦の生涯」とあるように、おもに東博コレクションの仏教彫刻と手塚治虫の漫画「ブッダ」の原画を交互に並べ、おシャカさまの生涯をたどる展示。なんか先月まで開かれていた平山郁夫の「仏教伝来展」でも見たような仏像があるぞう。使いまわしか。それにしても東博が仏像と漫画を並べて展示するなんて、30年ほど前のカビの生えたような陳列品やお役所的な職員の態度を知る者にとっては、ずいぶん軟らかくなったもんだと感慨もひとしお。ひとつだけ難を申せば、いったい仏像を見せたいのか手塚漫画を見せたいのか、それとも釈迦の生涯を知ってほしいのか、ビミョーに焦点が合わないこと。もちろんそのすべてを紹介したいのだろうけど、手塚漫画を読んでると仏像がその参考資料にしか見えないし、仏像を見てると手塚漫画がその解説に思えてきて、いったいどっちに肩入れしたらいいのか悩んでしまうのだ。これはひょっとして、ぼくにとって漫画も仏像も(ついでに釈迦も)ほぼ等距離にあり、いずれにも特別な思い入れがないからなのかもしれない。

2011/04/25(月)(村田真)

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フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

会期:2011/03/03~2011/05/22

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

ドイツ・フランクフルトのシュテーデル美術館からの出品。フェルメールの《地理学者》をはじめ100点近い作品をごっそり借りることができたのも、ご多分にもれず美術館の改修工事のためという。宗教画から肖像画、風俗画、風景画、静物画まで万遍なくそろえましたって感じで目の保養になった。お目当てのフェルメールだけでなく、マネのようにじつにあっさりと描くフランス・ハルスの肖像画、農民の風俗画で知られるヤン・ステーンの初期宗教画、マイケル・ジャクソンそっくりのバーレント・ファブリティウス(フェルメールの後継者と見なされたカレル・ファブリティウスの弟)の自画像、当時としては珍しく女性画家として成功を収めたラッヘル・ルイスの花の静物画など、見どころは少なくない。が、やっぱりフェルメールにトドメを刺す。《地理学者》はフェルメール作品としては描写に雑な部分があり、評価はけっして高くないのだが、こうしてあらためて見比べてみるとほかの画家とのレベルの差は歴然。もう空気からして違う。二流画家の最高傑作より、超一流画家の凡作のほうが優れていると断言しよう。

2011/04/25(月)(村田真)

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「篠原一男と7つの住宅論」展

会期:2011/04/24~2011/04/30

桑沢デザイン研究所1Fホール[東京都]

1950年代から90年代まで、時代順に39の住宅模型が並ぶ、会場の風景は壮観だった。順路に沿って見ていくと、篠原の作風の変遷をたどることができる。東日本大震災の影響で開催が危ぶまれるなか、建築系ラジオのスタッフ、平田りかを含む、わずか7名の学生が主催した企画である。感心したのは、手で模型の屋根を外せること。なるほど、篠原建築にとって屋根の姿は重要だが、内部空間も重要である。しかし、通常の模型のように屋根が外せないと、内部がわからないし、最初から屋根がない模型をつくると、外観がわからなくなる。つまり、外せると両方楽しめるというわけだ。

2011/04/26(火)(五十嵐太郎)

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