artscapeレビュー
2016年04月15日号のレビュー/プレビュー
ビナス幼稚園、小学校
[インドネシア、ジャカルタ]
Dentonによるビナス幼稚園と小学校を見学する。ジャカルタ南部に建設された中高まで一貫のインターナショナルスクールであり、隣のゲーテッテッドコミュニティと同様、周囲に対して完全に閉じる。ポツ窓とカラフルなヴォリュームの操作が印象的な外観だが、内部空間にあまり貢献していないのは残念だった。とはいえ、広報的なインパクトは大きそうなデザインである。
写真:左列=ビナス幼稚園、小学校外観、右=上から、教室、図書室、食堂
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
スタジオ・トントン
[インドネシア、ジャカルタ]
次に隈研吾と共同プロジェクトが進行中のスタジオ・トントンを訪問する。現地で驚いたのは、ゴルフコースに幾つかの住宅が建ち、その向かいに事務所が存在したこと。光や風、水の音などの自然のささやかな変化を受け止める透明で白い建築は、日本の現代建築とも共通している。ガラス張りの浮かせた模型室など、増築の仕方も興味深い。彼らの本も素晴らしいデザインだった。
写真:左=上から、スタジオ・トントン外観、天井、右=上から、天井、打ち合わせ室、模型室
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
スカルノ・ハッタ国際空港
[インドネシア、ジャカルタ]
ジャカルタの空港へ。国際空港はリゾート風の伝統屋根のデザインであり、ポール・アンドリューらしくない設計のように思えた。国内線はセキュリティを過ぎて、各ゲートに分岐しながら、移動する途中、完全に屋外としてのブリッジを移動するのだが、これこそがインドネシアらしい空間のあり方である。
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
ジョグジャカルタ
[インドネシア、ジョグジャカルタ]
大都市のジャカルタに対して、古都のジョグジャカルタは落ち着く。グリーンホスト・ブティックのホテル・プラウィロタマンに宿泊する。CV TIM TIGAによる設計は、緑面に覆われたファサード、プール上の細い中庭、屋上の人工菜園を特徴とし、403 ARCHITECTUREを想起させるようなリノベーション的なインテリアが楽しい。
写真:左上=グリーンホスト・ブティック、左下・右列=ホテル・プラウィロタマン
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
中村一美個展
会期:2016/03/08~2016/04/02
カイカイキキギャラリー[東京都]
作品は計13点。とりあえず「絵巻」シリーズとそれ以外に分けてみる。「絵巻」シリーズは、絵具たっぷりの斜線が勢いよく何本も引かれた「斜行グリッド」と呼ばれるパターンで構成されたもので、その斜行グリッドの影のようなイリュージョナルな薄い線まで入っている。淡い藤色や薄もえぎ色の背景色といい、絵巻の建物の描写を思わせる斜めの平行線といい、いかにも日本的なデザインだ。これはある意味わかりやすいし、スーパーフラットにも通じるし、比較的多くの人に受け入れられるだろう(中村の作品のなかでは)。それに対して、それ以外の、例えば《北奥千丈VI》などは、絵具をベタベタ塗りたくった表現主義的な抽象だが、画面は混乱しているし、色彩も美しくないし、失敗作と見られかねない作品だ。それなのになんでこんな作品も入れたのかといぶかしく感じたが、その一方で、ひょっとして、この違和感こそ狙いだったのかもしれないと思ったりもした。リーフレットのコメントによれば、この違和感を中村は「不協和音」と呼び、まさに「私の意図するところ」という。この「不協和音」がすばらしいのではない。「不協和音」を恐れぬ勇気がすばらしいのだ。
2016/03/30(水)(村田真)