artscapeレビュー
2016年12月15日号のレビュー/プレビュー
「肉声」~ジャン・コクトー「声」より~
会期:2016/11/25~2016/11/27
草月ホール[東京都]
ジャン・コクトーの一人芝居に触発されつつ、舞台を戦時下のモダニズム住宅に変え、名だたる美術家(杉本博司)、小説家(平野啓一郎)、俳優(寺島しのぶ)、音楽家の各分野が交差する興味深い実験的な企画なのだが、演劇としてリアリティラインをどこに設定したか、ややわかりにくい台詞が多かったのが、どうしても気になった。
2016/11/26(土)(五十嵐太郎)
松本竣介 創造の原点
会期:2016/10/08~2016/12/25
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館[神奈川県]
今日は某女子大の教え子3人と展覧会巡り。まずBankARTで待ち合わせ、柳幸典展を見てから鎌倉へ移動。ところがJRが事故のため動かず、地下鉄に乗り換えたため金も時間も無駄にかかってしまった。くっそおおお! 鎌倉に行くのは本館の最後の展覧会以来だが、今回は別館での展示。出品作品はコレクションが中心で、点数もそれほど多くない。油彩、デッサンなど竣介だけで約60点。ほかに麻生三郎、靉光、寺田政明、井上長三郎、鶴岡政男ら新人画会のメンバーや、藤田嗣治の裸婦像も。また、竣介の撮影した風景写真や書簡、雑誌(特に戦時中の座談会「国防国家と美術」と、それに竣介が応えた「生きてゐる画家」が載った『みづゑ』誌)、スケッチ帖などの資料類が充実しているのは鎌近らしい。それにしても、4年前に大規模な生誕100年記念展を葉山でやったのに、なぜまた半端な規模の松本竣介展を開くのか不思議に思ったが、これはどうやら鎌近の宿命なのかもしれない。鎌近が公立美術館で初めて竣介の作品を紹介したのは、画家の死後10年の1958年のこと。その後、遺族らから寄贈を受けて、68年に旧館の1室を松本竣介記念室として公開したが、まもなく閉室。84年に別館が開館すると、展示室の一部を松本竣介コーナーとして作品を公開してきた。鎌近はつねに竣介とともにあり、その作品を紹介し続ける運命にあるのだ。
2016/11/26(土)(村田真)
石内都「命の衣─百徳と背守り」
会期:2016/11/05~2016/12/18
鎌倉画廊[神奈川県]
閉廊まであと1時間。画廊は鎌倉山にあるので、4人いるからタクシーを飛ばそうと思ったが、なかなか来ないのでやっぱりバスで行くことに。どっちにしろ道は1本しかなく、すごい混雑で間に合わないことがわかったため、車中から電話して画廊を開けておいてもらい、15分ほど過ぎて到着。今日は交通難だ。今回の石内都展は、幼児の着物の背中に魔除けの刺繍を施した「背守り」と、老人や近所の人たちから集めた端切れを縫い合わせて子どもの成長を願った「百徳着物」を撮った写真の展示。着物のシワを伸ばして折り目正しくきっちり撮るのではなく、シワの陰影や部分的なボケなどをむしろ強調しているようにも見えるのは、石内がこれらを「標本」としてではなく「生体」として捉えているからではないだろうか。いいかえればこれらは「静物写真」ではなく「生物写真」なのではないか。
2016/11/26(土)(村田真)
札幌路面電車停留所
会期:2016/11/27
[北海道]
札幌へ。ローラン・ネイによる路面電車の狸小路の停留所を見学する。スチールをサンドイッチしたスリムなオブジェ的な形態に、複数の機能を埋め込む。動く電車側から見ても面白そう。強く主張しすぎるわけでもなく、街に良質なデザインを届けている。こういう優れた停留所が、日本にもっと増えたらよいと思う。
2016/11/27(日)(五十嵐太郎)
《北菓楼札幌本館》
会期:2016/11/27
[北海道]
安藤忠雄、竹中工務店による北菓楼札幌本館へ。1926年の図書館(一時は美術館)を改造保存したプロジェクトである。煉瓦の外壁を残しつつ、一部復元を行ない、内部の吹抜けには細い柱の上に交差ヴォールトが連なる軽やかな白い天井を創出する。2階のカフェには天井まで届く巨大本棚を二面。話題性のある空間のためか、多くの人で賑わっていた。
2016/11/27(日)(五十嵐太郎)