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2017年06月01日号のレビュー/プレビュー

ゴースト・イン・ザ・シェル

未来都市とデザインは綺麗で満足なのだが、結局、オリジナルがいかに先駆的だったかを再認識させるハリウッド版とも言える。実写とCGの混ざり方は、どこまでが人間でどこからがそうでないかが曖昧な物語に合うかもしれない。なお、日本人のキャラをスカーレット・ヨハンソンが演じるホワイトウォッシングの問題については、魂と義体の関係で興味深いことが起きている。

2017/04/09(日)(五十嵐太郎)

総合開館20周年記念 山崎博 計画と偶然

会期:2017/03/07~2017/05/10

東京都写真美術館[東京都]

活動の初期は演劇やパフォーマンスを記録していたが、1970年代から何を題材にするかではなく、どう撮るかに関心がシフトし、理知的な方法論を展開する。特に太陽の光の動きを長時間露光で撮るヘリオグラフィが興味深い。ほかにも、よく見ると普通ではない桜の写真、杉本博司と違うタイプの海の水平線などのシリーズから、方法論のアーティストであることがよくわかる。

2017/04/09(日)(五十嵐太郎)

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総合開館20周年記念 夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 総集編

会期:2017/03/07~2017/05/07

東京都写真美術館[東京都]

これまで何度かリサーチをもとに開催した幕末・明治期の展示の総集編だけに重みがある内容だった。私的から公的写真へ。前も出品されていたが、明治三陸大津波による廃墟や屍体の写真集が生々しい。傾いた家々には斜めにつっかえ棒が立て掛けられていた。明治三陸大津波については、後に描かれた悲惨な絵が有名だが、被災地を生々しく撮影している過去の記録写真もわれわれの忘却を教える。

2017/04/09(日)(五十嵐太郎)

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「螺旋と蜘蛛」

会期:2017/04/13~2017/04/16

KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

螺旋状の舞台をぐるぐる死者がまわり、中央に垂直の「蜘蛛の糸」という空間構成はけっこう好みだが、物語はむしろ亡くなる前の罪(神殺しなど)の記憶再生がメインになり、想像とちょっと違っていた。それにしても、ジャンルを問わず、日本では似非宗教批判のネタが多すぎて、やや食傷気味である。

2017/04/13(木)(五十嵐太郎)

海難と救助─信仰からSOSへ─

会期:2017/02/18~2017/04/16

横浜みなと博物館[神奈川県]

「板子一枚下は地獄」という言葉があるように、海という大自然を相手にする船乗りの仕事はつねに危険と背中合わせだ。それでも、モノやヒトの輸送という需要があるところに海運業は栄え、同時に海難のリスクを軽減するためのさまざまな努力が行なわれてきた。本展は江戸時代から現代まで、海上交通に関わる人々の海難事故への対応の歴史を辿る展覧会だ。第1章は江戸時代の海難と救助。気象予報がなく、航路標識なども未整備だった江戸時代には海難事故を未然に防ぐ手立てはほとんどなく、船乗りたちは常日頃から神仏に航海の安全を祈ってきた。他方で、事故が起きた際の対応はある程度整備されていた。沿岸の住民には海難救助が義務づけられており、人を救助した者には報酬が、また引き上げられた積み荷に対しては、その評価額から一定の割合の金額が支払われたという。近代になると事故が起きるたびに新たな安全対策がなされ、技術は改良されてきた。第2章では明治時代以降の歴史に残る海難事故とそれらを教訓に行なわれてきた安全対策、第3章では灯台や航路標識の整備、海図の制作、気象予報の充実や法令の整備など、事故を防ぐための努力が紹介されている。ここでは海難救助の方法を解説した掛図(明治後期~大正期)や、海難防止を周知するポスターなどのグラフィックが興味深い。さまざまな対策、技術が進歩しても、自然条件による事故、人為的なミスが完全になくなることはない。第4章では無線や救命胴衣など事故への備えと、船体のサルヴェージなど、事故が起きることを前提とした各種の対策が紹介される。さて、展覧会の主題は「海難と救助」ではあるが、海難を扱う以上、リスクの分散や、救助、安全対策にも大きな役割を果たしている海上保険や船級協会についても解説して欲しかったところだ。[新川徳彦]

2017/04/14(金)(SYNK)

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