2017年06月15日号
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artscapeレビュー

The BLACK POWER ブラックパワー・ミックステープ~アメリカの光と影~

2012年05月01日号

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会期:2012/04/28~2012/06/08~

新宿K’s cinema[東京都]

革命にとって重要なのは「声」である。耳に届く声の質に惹きつけられたからこそ、かつての民衆は革命運動に意欲的に参加したのではないか。黒人解放運動を記録したニュース映像を編集したこの映画を見ると、指導者たちの声の魅力について改めて考えさせられる。
登場するのは、マーチン・ルーサー・キングやマルコムXはもちろん、これまであまり映画で描かれることの少なかったストークリー・カーマイケル、アンジェラ・デイヴィスら、いずれも50~70年代の黒人解放運動の指導者ばかり。時系列に沿いながら運動の展開を小気味よく見せてゆく。政治運動や社会運動のリーダーというと、戦闘的な熱弁のイメージが定着しているが、とりわけ印象的なのは、ストークリー・カーマイケルとアンジェラ・デイヴィスのじつに静かな語り口だ。両者に共通しているのは、「青い炎」ともいうべき押し殺した熱情で、内側の怒りを直情的に表現することを努めて自制しようとしているところに、しなやかでたくましい知性をたしかに感じ取ることができる。この知性は、声だけでコメントを寄せている文化人や知識人の多くが共有しているが、なかでもエリカ・バドゥが歌い上げる声と、アンジェラ・ディヴィスの謳うような演説の声は、その知性が激しく共鳴しながら練り上げられた稀有な例だと思う。
個人的な記憶を振り返ってみても、来日したネルソン・マンデラの声はさほど残っていないが、スチュアート・ホールのそれは強烈に耳に残っている。ホールが語った内容はまったく覚えていない。にもかかわらず、東大安田講堂の内部に響き渡ったバリトン・ボイスのバイブスだけは身体にはっきり刻み込まれているのだ。声が、人を突き動かすのである。

2012/04/10(火)(福住廉)

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