artscapeレビュー
ベン・シャーン「クロスメディア・アーティスト──写真、絵画、グラフィック・アート」
2012年04月15日号
会期:2012/02/11~2012/03/25
名古屋市美術館[愛知県]
アメリカの画家ベン・シャーン(1898-1969)の大規模な回顧展。会場の展示は、社会の不正義に迫り下層労働者の姿などにも目を向けていた時代に始まり、版画、グラフィック作品、戦前の写真やポスター、タイポグラフィなど、そしてアジアや日本をテーマにした作品という四つのセクションで構成されていた。なかでもたいへん興味深かったのは第五福竜丸事件(1954)をテーマにした「ラッキードラゴン」の一連の作品。イラストや絵画など、さまざまなものがあったが、シャーンがこんな作品を手がけていたとは今展で初めて知った。これは1958年から約10年間続けられたのだという。50枚のオリジナル、200枚以上のデジタルイメージが並んだ本人撮影の写真もさることながら、見応えのあるボリュームで、作品だけでなくベン・シャーンの作家像も浮かび上がってくるような内容。4会場を巡回する展覧会で現在は岡山県立美術館で開催中(会期:2012年4月8日~5月20日)。
2012/03/18(日)(酒井千穂)