artscapeレビュー

鞍田崇×服部滋樹『〈民藝〉のレッスン──つたなさの技法』出版記念トーク

2012年04月15日号

会期:2012/03/01

MEDIA SHOP[京都府]

20世紀初め、柳宗悦が先導者となり展開した民藝運動。近年、若い世代の人々からも関心が寄せられている。今年一月末に出版された『〈民藝〉のレッスン──つたなさの技法』(フィルムアート社)は、「なぜいま民藝なのか?」というテーマのもと、料理研究家やデザイナー、建築家、哲学者、文化人類学者など、さまざまなフィールドで活躍する人々が、民藝についてそれぞれの視点から論じている本。この編著者であり哲学者でもある鞍田崇さんと、ゲストの服部滋樹さん(graf代表)による出版記念トークが開催された。会場は立ち見の人も出るほどの超満員の状態。約2時間にわたり、「今の時代を生き抜くためのヒント」が民藝にはあるのではないかという切り口でさまざまな話が繰り広げられた。民藝運動の理念やその実践、柳宗悦の思想など、ある程度の知識がなければ理解しにくい内容もあったが、消費と生活速度、自らの暮らしに対する「愛おしさ」、生活空間と身体感覚、モノに対する考え方など、さまざまな関係性から問題を提起しつつ民藝を再考、意見を交わし合う二人のトークはもっと考えてみたいという意識を喚起するもので刺激があった。4月から月に一度のペースで鞍田氏がホストとなり、毎回関連ゲストを迎えてのレクチャーが行なわれる予定。

2012/03/01(木)(酒井千穂)

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