artscapeレビュー
MOTOKO「田園ドリーム」
2012年04月15日号
会期:2012/03/28~2012/04/10
銀座ニコンサロン[東京都]
MOTOKOは2003年に刊行の『Day light』(ピエブックス)におさめた森の写真を撮影するために、初めて滋賀県を訪れた。琵琶湖の周辺の「里山の荒廃によって急速に失われていく日本の原風景」に強く魅せられた彼女は、2006年から取材・撮影し始めた。最初の頃は里山や棚田の風景、民間行事、祭りなど「ハレの日」の情景を中心に撮影していたのだが、次第に農家の暮らしに興味が移り、2008年から本格的にルポルタージュを開始する。その過程で、若手農家集団「コネファ」との協力関係ができて、展示やイベントを精力的にこなしてきた。現在は「田園ドリームプロジェクト」という名称で活動を展開している。
MOTOKOの写真は、まさに「日本の原風景」というべき琵琶湖の湖岸地域の自然、農業、祭事などを総合的にとらえており、気持ちよく目に飛び込んできて淀みがない。この地域の暮らしぶりを、明快なイメージでいきいきと浮かび上がらせているといえるだろう。ちょっと気になったのは、展示されている写真にキャプションがまったくなかったこと。むろん、写真家が被写体をどんな切り口で撮影しているのかを見せるのが眼目だから、余分なテキストを省くという選択はありえる。だが、たとえば祭りの演目、料理など生活の細部の情報は、観客にとって重要な意味をもつのではないかと思う。写真とテキストが一体化した展示を考えてもよかったのではないだろうか。
2012/03/30(金)(飯沢耕太郎)