artscapeレビュー
石川直樹「やがてわたしがいる場所にも草が生い茂る」
2012年04月15日号
会期:2012/02/29~2012/03/06
銀座ニコンサロン[東京都]
銀座ニコンサロン、新宿ニコンサロン、大阪ニコンサロンを会場に連続企画展「Remembrance3.11」が開催された。8つの写真展と5つのシンポジウムで「カタストロフィの意味を多面的な角度から省察」しようとする意欲的な企画だ。震災後1年ということで、さまざまなイベントが開催されているが、人が集まりやすいニコンサロンという会場の利点を活かした、とてもいいプロジェクトだと思う。
その第一弾として開催されたのが、この石川直樹展(大阪ニコンサロンに巡回、3月22日~28日)。石川は震災後2日目に青森県八戸から被災地に入り、岩手県沿岸部を南下して生々しい状況を撮影した。その後6月、9月、今年の1月と都合4回現地に入り、定点観測的に撮影を続けている。いつものように撮影、プリントの技術的な処理の甘さが目につくが、とにかく思考より先に体が動くという行動力を発揮しているのがいかにも石川らしい。展示の最後に、岩手県大船渡市三陸町で毎年1月15日に行なわれる「スネカ」という行事の写真が並んでいた。秋田の「ナマハゲ」のような異界の神が人里に降りてくる行事だが、このような民間儀礼への着目も、東北のルーツを掘り起こす試みとして、彼の勘所のよさを示している。
石川の展示を皮切りに笹岡啓子、新井卓、吉野正起(以上、銀座ニコンサロンと大阪ニコンサロン)、和田直樹、田代一倫、鷲尾和彦、宍戸清孝(以上、新宿ニコンサロンと大阪ニコンサロン)の個展が開催される。宮城県仙台市在住の宍戸を除き、地元の写真家がいないのが少し気になるが、その成果が期待できそうだ。
2012/03/01(木)(飯沢耕太郎)