artscapeレビュー

藤浩志の美術展「セントラルかえるステーション──なぜこんなにおもちゃが集まるのか?」

2012年09月15日号

会期:2012/07/15~2012/09/09

3331 Arts Chiyoda 1階メインギャラリー[東京都]

子どもたちが要らなくなったおもちゃを持ち寄り、自分たちでおもちゃの価値を査定して、ほかのおもちゃと交換できるシステム「かえっこ」は、藤浩志による発案以来13年間、国内外の1,000カ所、5,000回以上にもわたって開催されてきたという。本展では、藤の作家としての活動を紹介する展示とともに、これまでの「かえっこ」で集まった大量のおもちゃを用いたインスタレーションやワークショップ、サイレント・オークションなどが行われていた。目を見張るような夥しい量のおもちゃが山積みだった会場。ぬいぐるみやミニカー、フィギュアなどじつにさまざまなものがあったのだが、なかでも目につくのがファーストフードの子ども向けセットについてくる“おまけ”の量だった。ずらりとそれらが並ぶありさまに違和感を覚え、なぜこんなにおもちゃが集まるのか?という今展の問いは否応なく消費生活のイメージと直結して、“要らなくなっていく”おもちゃへ連想を掻き立てる。それにしても、かえる(変える、還る、換える、買える)」をテーマにしたこの展覧会は、大人と子ども両方の意識に働きかけようとする狙いがある。私が訪れたとき、展示ゾーンには子どもの姿はなかったのだが、誰かが“要らなくなった"、この大量のおもちゃを前に子ども達はどんな反応を示すのだろうかと気になった。ここでいっときは無邪気に遊ぶかもしれない。けれど、そのあとなにかを思うだろうか。この展覧会から、モノを大切にするということを学べるだろうか。その想像は私にはなかなか難しく、やや消化不良の気分にも。個人的には、藤浩志がこれまで取り組んできたプロジェクトを解説する作家年表や写真パネルの展示のほうが面白く、アーティストとしての藤のエネルギッシュな活動の魅力に惹きつけられた展覧会だった。


左=夥しい量のおもちゃが山積みの会場
右=2010年の青森ねぶた1台分の廃材から制作された《飛龍》が展示された空間

2012/08/03(金)(酒井千穂)

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