artscapeレビュー
山中たろう「Fifth Door」
2012年09月15日号
会期:2012/07/07~2012/08/03
年に一度くらいのペースだろうか、こつこつ制作を続け作品を発表している山中たろう。大学卒業後しばらくは京都を拠点にしていたが、現在は東京で作家活動を続けている。新しくオープンしたギャラリーで個展を開催しているのをたまたま知り、見に行った。古民家をオーナー自身が改築、改装したという会場のギャラリーは、大通りからは外れた目立たない場所にあったのだが、神田川沿いの静かな環境で、二階建ての建物も雰囲気のある佇まい。会場に展示されていたのは森や山などの自然、プールやサッカーのグラウンドに、ぽつりと小さく人物や動物を描いた油画作品。明るい色彩と爽やかでありながら穏やかな光の表現、山中自身の記憶のイメージを元に描かれるそれらの絵画は、画面の枠外に続く光景や、少し先の未来の物語の想像を喚起する。ただ、私自身は数年ぶりに山中の作品をみる機会だった今回、全体に以前見た印象とほとんどど変わらない作風であったのは少し残念だった。これからも活動を続けてほしい作家のひとり。まだまだ新たなものにも挑戦しながら作品を発表してほしい。
2012/08/03(金)(酒井千穂)