artscapeレビュー
ルーヴル美術館からのメッセージ:出会い
2012年09月15日号
会期:2012/07/28~2012/09/17
福島県立美術館[福島県]
石巻からの帰りに福島県立美術館を初訪問。ここでは宮城県美術館、岩手県立美術館に続き、ルーヴル美術館が被災3県にコレクションを貸し出す巡回展が開かれている。ルーヴルのコレクションといったって緊急に貸し出しを決めたものだから、そんなたいした作品は来てないだろうとタカをくくっていたが、たしかに作品そのものはあまり知られてない小品が大半を占め、点数も24点と少ないものの、古代エジプトの石像から中世の写本、ルネサンスの彩色皿、17世紀オランダの風俗画、ロココ彫刻までじつに幅広く選ばれている。なにより「出会い」のテーマの下、必ずふたり以上の人物が描かれ、人間の関係性を際立たせた作品を選んでる点が泣かせる。とりわけイタリアの陶製食器には、人物は描かれていないけど握手する手のみが描かれ、人間同士のつながりが強調されている。さすがフランス、シャレた真似を。んが、これだけでは物足りないと感じたのか、巡回3館がそれぞれ数点ずつコレクションをつけ加えている。舟越保武の首像とか、北川民次の戦時中の家族の肖像とか、橋本堅太郎の木彫の女性像とか、各館自慢の作品かもしれないが、ルーヴルの古典的作品に比べて明らかに見劣りがするし、「出会い」というテーマからはずれたものも少なくない。残念ながら蛇足というほかない。
2012/08/11(土)(村田真)