artscapeレビュー
うつゆみこ「ばらまど」
2012年09月15日号
会期:2012/08/18~2012/09/30
G/P GALLERY[東京都]
カラフルかつ可愛らしい、だが時にグロテスクでエロティックなオブジェ+コラージュ作品で知られるうつゆみこの新作展は、期待にたがわぬ面白さだった。今回の個展には、代表作の「はこぶねのそと」シリーズの延長線上の作品に加えて、新作の「ばらまど」のシリーズも展示されていた。これまた、彼女の偏執狂的なこだわりが爆発した連作で、同心円上に並んださまざまな物体に、円形の切り紙が網状に掛けてある。使っている材料は野菜、果物、魚介類など、うつ好みの「食べ物」オンパレードだが、以前のシリーズと比較すると、より抽象度が増しているのに気がつく。
ただ細部に目を凝らすと、「グロとエロとカワイイ」が三位一体となった圧倒的な物質感は健在で、これはこれで彼女の本領が充分に発揮されたシリーズと言えるだろう。一見、コンピュータで画像合成したように見えるが、エビのひげの曲がり具合などをみると、やはり一個一個手で並べて形をつくっているようだ、超細かい編み目模様の切り紙も含めて、気が遠くなるようなエネルギーが費やされているわけで、そのあたりの手抜きのなさが彼女にしかできない世界の構築に結びついている。他にも自作のカラーコピーを、キッチュな布張りの額におさめた小さな作品が机の上に山のように並んでいて、見ているうちに目と頭がクラクラしてきた。この作家の無償のエネルギーの噴出は、いつの間にかとんでもないレベルにまで達しているのではないだろうか。
2012/08/23(木)(飯沢耕太郎)