artscapeレビュー
レーピン展
2012年09月15日号
会期:2012/08/04~2012/10/08
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
レーピンというのは美術史的にどのように位置づけられているのか、落としどころのわからない画家だ。生まれは1844年だから印象派と同世代(ほんの少し若い)で、パリ留学中に印象派の旗揚げに接し大きな影響を受けたものの、画風はそれ以前のリアリズムに徹していたからモダニズムの文脈からは外れる。また、社会的弱者や革命運動を描く一方で、帝政ロシアの貴族や文化人の肖像画も手がけたというのも一筋縄ではいかないところだ。芸術も社会もイケイケの前衛だったロシア革命時には70歳をすぎていたが、当時はどのように見られていたのだろう。亡くなった1930年は社会主義リアリズムが真っ盛りで模範的画家と見なされていたようだが、ソ連崩壊後どのように評価が変わったのか。彼の生きた19~20世紀のロシアほど大きく変動した社会もないから、自分は変わらなくても時代によって保守的と見られたり革新的と見られたりしたんだろう。まあ彼自身はリアリズム絵画しか描けない職人画家だったのかもしれない。
2012/08/19(日)(村田真)