artscapeレビュー
与えられた形象──辰野登恵子/柴田敏雄
2012年09月15日号
会期:2012/08/08~2012/10/22
国立新美術館[東京都]
辰野と柴田? どういう組み合わせだろうと不思議に思ったが、東京藝大油画科の同級生と聞いて少し納得。でも同窓会じゃあるまいし、ただそれだけの縁で組ませたとしたら企画力ゼロだが、展覧会を見てなるほどと感心した。タイトルどおり、たしかにふたりは「与えられた形象」で共通しているのだ。辰野は70年代にグリッドやストライプのミニマルな平面でデビューしたが、80年ごろから筆触もあらわな表現主義的絵画に移行。次第に鮮やかな色彩の装飾パターンが表われ、90年ごろから立体感や陰影のある形態が見られるようになった。このモコモコっとしたりカクカクっとした抽象とも具象ともいいがたいイリュージョナルな形態は、もう20年以上も見続けているはずなのにいまだぼくのなかでは抵抗感がある。で、このモコモコカクカクの立体感が、まさに柴田の写真に共通する形態だったのだ。柴田の写真に感じられるのは、ダムや擁壁のような凹凸のあるヴォリューム感を使っての抽象志向であり、作為なき作為ともいうべき土木造形への偏愛だ。その作品に初めて接したときに生じた“萌え”のような感覚は、辰野作品に感じる抵抗感と対照的だが、それはおそらく写真と絵画というメディアの違いに由来するものかもしれない。この両者のメディアを超えた共通性は偶然のものとは思えないが、それが彼らの世代特有のものなのか、それとも藝大での彼らの活動に由来するものなのか、判断がつきかねるところ。
2012/08/07(火)(村田真)