artscapeレビュー
隠岐しおさい芸術祭
2012年09月15日号
会期:2012/08/21~2012/09/16
島根県隠岐郡西ノ島町全体[島根県]
公開制作「石田真也+吉田雷太による漂着物アート」
公開制作「國府理による、西ノ島にてKOKUFUMOBIL」
展覧会「様々な作家による、隠岐・西ノ島」
古事記編纂1300年を記念した島根県の観光振興プロジェクトにあわせ、隠岐エリア(隠岐の島町=島後、西ノ島町=西ノ島、海士町=中ノ島、知夫村=知夫里島の全4島)で7月下旬から「隠岐ジオパークフェスティバル」というイベントが開催されている。主催は島根県と隠岐観光協会。4島のひとつ、西ノ島町で8月21日から始まった「隠岐しおさい芸術祭」にはおもに立体や彫刻作品を手がけるアーティストたちが多く参加し、会期中、島内各所で公開制作や展示を行なっていた。ここに私も企画で参加。美術家の井上信太によるワークショップ、サウンドアーティストの鈴木昭男とコンテンポラリーダンサーの宮北裕美によるセッション・ライブの開催にあわせて8月29日から5日間西ノ島に滞在し、アーティスト達の作品展示や公開制作の現場を見て回った。焼火神社では、田中智子が乾漆による作品を発表。若手作家の石田真也と吉田雷太は、8月初旬からから西ノ島に滞在し、島に漂着した漂流物を材料に国賀にある旧レストハウス跡の空間をまるごと作品化するプロジェクトに取り組んでいた。ゴミ処理施設「清美苑」内の敷地をスタジオに作品を制作していたのは、同時期に京都芸術センターでも個展を開催中(7/28~9/9)だった國府理、鉄をおもな素材に金属彫刻を制作している藤原昌樹。島内にあった廃船、廃車を素材に、そのとき國府が制作中であった《KOKUFU MOBIL》は、現在「こどもの国」と呼ばれる広場に展示されている。また、先の京都芸術センターでの個展に出品された國府の作品も同広場に展示されることになった。別府港の近くでは、実際に座ってみることのできる《MENTAL CHAIR》のシリーズなどを発表している岩野勝人の作品が設置されていた。この芸術祭は大規模なものではなく、正直なところ、島内では車がないと各会場間の移動がとにかくたいへん。島民にはどのくらい認知されているのかも気になった。しかし、焼火神社や国賀浜など、作品発表の舞台となっていた海や山の大自然の景色は実に素晴らしく、参加アーティストたちもユニーク。特に、いわゆる「ゴミ」となって浜辺に流れ着いた漂着物だけで廃墟を作品化していた石田真也と吉田雷太からは頻繁に訪ねてきてくれるようになった島の人々との交流のエピソードも聞くことができ、アーティストや作品がもたらすさまざまな可能性を感じた。隠岐は「日本ジオパーク」に認定されているが、それにもふさわしい内容の芸術祭であったと思う。新たな展開とともに次回に繋がっていくことを期待している。
2012/08/30(木)~2012/09/02(日)(酒井千穂)