artscapeレビュー
インシデンタル・アフェアーズ──うつろいゆく日常性の美学
2009年05月15日号
会期:2009/03/07~2009/05/10
サントリーミュージアム[天保山][大阪府]
日常のものごとの変化や偶発性をうつろいゆく美としてとらえる、という切り口で国内外17組のアーティストを紹介。会場ではじめに展示されていたのはヴォルフガング・ティルマンスの写真。小学生くらいの子どもと母親がどうやってつくったのかと話しながら熱心に見ている光景を目にして、今展のイントロダクションとしても成功していると思った。スナップ写真のイメージや曖昧な形態に、個人的な経験や記憶も重なり連想が広がる木村友紀のインスタレーション作品は、今展が狙いとしている美術の魅力や楽しさが集約されている。他の展示も映像、絵画、立体など、多岐にわたる内容でじっくりと見たい作品ばかりだ。毎日1時間おきに開催されるという10分間の「展覧会見どころトーク」にも参加してみた。時間も短いが、それでいて作品の解釈や理解に役立つポイントを押さえていてこのガイドもなかなか良かった! 間口は広いが質、量ともに十分満足できる内容だった。
2009/03/29(日)(酒井千穂)