artscapeレビュー

後藤剛「日日日日。2001─2008」

2009年09月15日号

会期:2009/08/17~2009/08/30

蒼穹舎[東京都]

後藤剛は1970年生まれ、大阪在住のアマチュア写真家だが、2000年代初頭から街歩きのスナップ写真を撮り続けてきた。今回の展示は蒼穹舎から同名の写真集が刊行されたのをきっかけにして、これまでの作品をまとめたもの。大阪・兵庫を中心にどこか「昭和」の匂いのする光景が写しとられている。「斜陽」という言葉がふと頭に浮かぶ。別に西陽の写真がとりたてて多いわけではないのだが、夕方の、闇が迫ってくる時や季節の哀感が、写真全体から滲み出ているように感じるのだ。また、どうしても尾仲浩二の旅のスナップを思い出してしまう。被写体に対峙する距離感が共通しているのだろう。画面の細部からわらわらと湧き出てくる、建物や通行人たちの表情がなかなか味わい深い。もう既にスタイルとしては確立しているので、これくらいの質の写真はいくらでも撮れるのではないか。とすると、もう少し違ったテーマにチャレンジしてもいいのではないだろうか。

2009/08/23(日)(飯沢耕太郎)

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