artscapeレビュー

冨倉崇嗣 展

2009年09月15日号

会期:2009/07/27~2009/08/08

Oギャラリーeyes[大阪府]

すべてを見るということは、何も見ていないことと同じである。冨倉の絵画を見ているといつもそんな言葉が浮かんでくる。背景に遠のいていたモチーフに意識が集中していくとき、同時にそれにまつわるイメージや記憶も引き出されて連想がひろがっていく。空間や時間の距離感を楽しむように、図と地のあいだを行ったり来たりして遊ぶ感覚とそこで変化するイメージの振幅が面白い。展示のなかに《marimo》という作品があった。緑がかったたくさんの丸いマリモが水面に浮かんでいる。傾いた水平線と、すべてが浮遊するような不安定な印象が強烈に記憶に残った。

2009/08/07(金)(酒井千穂)

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