artscapeレビュー

長谷川一『アトラクションの日常』

2009年09月15日号

発行所:河出書房新社

発行日:2009年7月7日

本書は、「揺られる」や「流される」など、10の動詞を掲げながら、われわれの社会がアトラクション化し、テーマパークとなっていく状況を論じたもの。アトラクションとは、出来事(イベント)に参加させられる工学的な反復運動である。近代以降の身体は、さまざまな日常の場面で、アトラクションに包まれている。駅、マーケット、コンビニ、鉄道や客船、そして舞台。機械と身体が縫合される空間の考察の数々は、ビルディングタイプ論とも接合し、建築の分野に対しても多くの示唆を与えてくれる。最終章は、「夢みる」ことさえも、アトラクション化されていると指摘し、「現在」をとりかえすことを唱えている。

2009/08/31(月)(五十嵐太郎)

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