artscapeレビュー
第1回所沢ビエンナーレ美術展:引込線
2009年09月15日号
会期:2009/08/28~2009/09/23
西武鉄道旧所沢車両工場[埼玉県]
所沢駅に隣接する巨大な車両工場跡を会場にしたビエンナーレ。天井からは鉄骨の梁や作業用の足場が吊り下がり、床には引込線のレールが残るハードな空間なので、よっぽど存在感の強い作品でないと負けてしまう。そのため彫刻やインスタレーションが過半数を占め、絵画は細長い一室に追いやられている。しかも壁面をホワイトボードで覆ったうえに絵画を展示しているのだ。ここまでケアが必要なら、いっそ絵画はなくてもいいのでないか。ひとり長谷川繁だけが薄汚れた壁に直接絵画を掛けていたが、この展示は成功していたように思う。やはりこういう場所で見せる以上、空間の読み込みや展示の工夫は絶対不可欠だ。その意味で、森淳一の繊細きわまりない彫刻と、飯田竜太の事典を切り抜いた博物学的アートとでもいうべき作品はとても魅力的だが、この空間にふさわしいとは思えない。逆に、広い会場の中央の天井近くにクス玉を吊るし、ひもを手が届く手前の高さまで下ろした豊嶋康子の《固定/分割》は、この空間をよく読み込んだ作品といえる。しかも感心したのは、その手前にガラス球を吊った石原友明の作品、さらにその手前に球根のようなかたちをした戸谷成雄の木彫が置かれていること。つまり一部が球状になった作品が3つ並んでいるのだ。展示ディレクター(そんな人がいるのかどうか知らないが)のセンスが光る。
2009/08/30(日)(村田真)